発達障害という言葉は日常生活でも使われるようになり、教育や医療、福祉などの分野では適切な理解と対応が進んでいます。その一方で、正しい知識に基づかない認識で傷ついたり、不利益を被ったり、苦しい思いをしている人がまだ存在します。
医療の現場ではそのような苦しみに出会うことがまだまだ多いです。こちらでは、まずはネットで調べようと思った方に、わかりやすく、間違いのない説明をしていきたいと思います。
発達障害によくある誤解
まず、発達障害という名前だけを見ると発達が遅れている状態と思ってしまうかもしれません。それは少しずれた認識です。
もし、対象ととなる人の知的な能力全体が全般的に低下していたら、それは発達障害とは言わず、知的障害と判断されるでしょう。
発達障害は、社会性・行動面・学習などの特定の領域でのつまづきや困難さが見られる場合に診断されるものなのです。
発達障害の定義
2005年に発令された発達障害者支援法では以下のように定義されています。
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、
注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって
その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの
発達障害者支援法 (平成十六年十二月十日法律第百六十七号)
ちなみに今は広汎性発達障害という言葉はあまり使わなくなっています。
言葉としては、広汎性発達障害≒自閉症スペクトラム障害(ASD)と考えて、ほぼ問題ないでしょう。
発達障害の中で代表的なものは?
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
*アスペルガー障害、自閉症、高機能自閉症などと呼ばれることもある
・注意欠如多動性障害(ADHD)
*以前は注意欠陥多動性障害と呼ばれていた
・学習障害(LD)
発達障害は何歳ごろからわかるの?
アメリカの診断基準であるDSMなどでは、概ね12歳までに発現するものと定義されています。大人になってから生じたものは発達障害とは言えません。
発達障害の傾向は、早ければ1歳半検診あたりで指摘されることもあるでしょう。知的な遅れが目立たなかったり、まわりの環境によっては障害や特性に気づくことが遅くなることがあります。
遺伝と環境と
現在、発達障害と知られている障害は、過去に子育ての問題、養育の失敗によって起こっているという母原性の疾患と考えられている時期がありました。
いまは医療技術の進歩もあり、脳の機能の問題であるということがわかってきています。(ほんとうの意味で完全にはわかっていません。ノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質や脳の特定分野の活動の活発化や低下などが原因になっていると推測されています)。
発達障害は多因子によるものである
そして、いまでは発達障害はさまざまな原因によって起きているという考え方が基本となっています。もともと持っている生まれつきの遺伝的な要素や環境の中で起こる様々な要因が合わさり、それが障害として現れるのです。
例えば、生活習慣病と言われる糖尿病などを想像するとわかりやすいです。
遺伝的に糖尿病になりやすい傾向があるかないか、食生活はどうか?運動をしているかどうか? 他の病気があるか?などのいくつかの要因で糖尿病は発現します。遺伝だから100%というわけではありません。
スペクトラムとという考え方
また、昨今で変わってきたのは「発達障害=できない」という考え方が正しくないという認識です。発達障害の人たちは定型発達の人とは情報処理の仕方が異なっているだけであり、それはあることを覚えたり、使ったりするやり方が違うだけとも考えられるのです。
実際、WAISやWISCなどの知能検査を実施すると、発達障害の人には大きな偏りが出ることがあります。そして、できる能力を使い、できない能力を補完しているというようなこともあったりします。
そもそも、定型発達と発達障害の境界線はあいまいであり、はっきりと線引きができるものではありません。発達障害の特性がとても強い人から、社会生活がほぼこなせるような人までの連続性があって、発達の過程においても変わっていくと考えられるようになってきています。
この考え方をスペクトラム(連続体)と言います。
そのため、たとえ同じ診断名がついたとしても、それぞれの人によって、障害の状態は全く異なりますし、診断基準にはあてはまらなくとも、感覚の過敏性や不器用などが強ければ、社会生活に問題が起こることが考えられます。
(HSP:Highly Sensitive Personの概念はそのひとつでしょうか・・)
グレーゾーンという新たな問題も
そして、この間にあるグレーゾーンの人たちの問題が逆に出てきているような気が私はしています。凸凹はあるけれど、障害とは認定されない、公的な支援が期待しにくいゾーンの人たちは本当に生きるのがつらいと思います。
その件に関しては、また項を割いて書いていこうと思います。
その前に子どもの特徴に気づき、早期に対処する大切さを説明します。
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