自閉症スペクトラム障害の3つ組(ウイング)と診断基準について こだわりや想像力、コミュニケーションがポイント。その②

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現在、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断に用いられている概念としては、ウイング Wing,L.による3つ組と呼ばれる特徴が有名です。

それは「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「想像性の障害」の3つであり、DSMの診断基準にも影響を与えています。

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社会性の障害

 

まわりの人たちと上手につきあっていくためには、相手の気持ちを読み取りその場の状況を理解することが必要です。そして、自分の言動が相手にどのような影響を与えているかを察しなくていけません。

 

このような人間関係を作るために必要となってくるのが「社会性」です。多くの子どもは集団生活や家庭生活などを通じて、他人とのつきあい方を学び、暗黙のルールを習得します。

 

「社会性」の障害があるとこれらを自然に習得することが難しくなり、自分のしたいように行動してしまうという「自己中心性」が強く出てしまい対人関係においてトラブルに発展してしまうことがあります。

 

コミュニケーションの障害

 

言語をコミュニケーションの手段として使うときには、相手にわかりやすい言葉で、相手の対応を見ながら、会話をしていくことになります。

 

自閉症スペクトラム障害の人は、難しい言葉を並べてしまったり、相手が興味を持っていないのに一方的に話し続けてしまったりします。同級生や家族に敬語を使ったり、目上の人などにタメ口を使ってしまったりすることも見受けられます。

 

また言葉を字義通りに受け取ってしまうのも特徴です。冗談や皮肉が通じず、社交辞令を本気にしてしまったりします。そのため、例えば「最近どう?」なんていう曖昧な会話、雑談が苦手です。

 

想像力の障害

 

想像力と言われるとイメージしたり、連想する力と思うかもしれません。ここでいう「想像力の障害」とは、決まったパターンにこだわってしまいそれを繰り返し行い、他のやり方には興味を示さないようなことを言います。

 

自分のやっていることだけしか見れずに、それがまわりにとってどのような影響を与えるかわからなかったり、わかったとしてもそれを変えられないような状況と言えます。

 

例えば、スケジュールの変更やものの配置、手順へのこだわりなどが見られ、それに変更があると混乱したり、パニックになってしまうこともあります。一方でこだわりがある分野では、専門家もびっくりするような知識を有したりすることもあるようです。

 

その例に関しては、サヴァン症候群という考え方が参考になるかもしれません。

自閉スペクトラム症╱自閉症スペクトラム障害の診断基準

 

最後にきちんとした理解のために、DSM-5による診断基準を引用します。

A.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における

持続的な欠陥があり,現時点または病歴によって,以下により明らかになる。

 

⑴ 相互の対人的・情緒的関係の欠落で,例えば,対人的に異常な近づき 方や

通常の会話のやりとりのできないことといったものから,興味,情動,または

感情を共有することの少なさ,社会的相互反応を開始したり応じたりする

ことができないことに及ぶ。

 

⑵ 対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥,

例えば,まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから,

視線を合わせることと身振りの異常,または身振りの理解やその使用の

欠陥,顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。

 

⑶ 人間関係を発展させ,維持し,それを理解することの欠陥で,例えば,

様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから,

想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ,

または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。

 

B.行動,興味,または活動の限定された反復的な様式で,

現在または病歴によって,以下の少なくとも2つにより明らかになる。

⑴ 常同的または反復的な身体の運動,物の使用,または会話

(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動,

反響言語,独特な言い回し)。

 

⑵ 同一性への固執,習慣へのかたくななこだわり,または言語的・非言語的な

儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛,移行することの困難さ,

柔軟性に欠ける思考様式,儀式のようなあいさつの習慣,毎日同じ道順を

たどったり,同じ食物を食べたりすることへの要求)。

⑶ 強度または対象において異常なほど,きわめて限定され執着する興味

(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭,過度に限定・

固執した興味)。

⑷ 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ,または環境の感覚的側面に対する

並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える,特定の音,感覚に

逆の反応をする,対象を過度に嗅いだり触れたりする,光または動きを見る

ことに熱中する)。

 

C.症状は発達早期に存在していなければならない (しかし社会的要求が

能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし,その後の

生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。

D.その症状は,社会的,職業的,または他の重要な領域における現在の機能に

臨床的に意味のある障害を引き起こしている。

E.これらの障害は,知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延では

うまく説明できない。 知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に

起こり,自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには,

社会的コミュニケーション が全般的な発達の水準から期待されるものより

下回っていなければならない。


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