ASDへのアセスメントバッテリーとして復権
自閉症スペクトラム障害(ASD)が疑われる患者さんに実施される心理テストの組み合わせには移り変わりがあり、昨今ではWAIS-IV or WISC-IV+AQ日本語版+PARS-TR+PFスタディというバッテリーをよく見かけるようになりました。知能検査とPARS-TRを別日に実施することを考えると診療報酬の組み合わせも絶妙なのがいいですね。
PFスタディは古くからある心理テストです。児童向けに実施されることが多く、成人メインの私の勤務先ではめったに実施することがなかった検査です。それが池島らの論文*などの知見から、ASD向けに実施されることが増えました。
こちらではPFスタディを実施、解釈するに当たって有用な文献について紹介します。
*池島 静佳, 篠竹 利和, 高橋 道子, 北村 麻紀子, 千葉 ちよ, 前田 貴記(2014) 高機能広汎性発達障害におけるP-Fスタディ(成人用)の特徴, 心理臨床学研究,32巻1号 pp137-143.
最低限必要なのはPーFスタディ解説
実施・解釈をするにあたって、版元から出ているPーFスタディ解説 2020年版―成人用第3版 青年用 児童用第3版は必要となります。これがないと反応を分類したり、基本的な分析をすることができません。Amazonで購入もできますが、用紙と一緒に購入するのが普通のパターンだと思います。
改定されてはいますが全体的に古びた感じは否めませんね。用紙も幼児版は2006年に改定されましたが、青年用 ・成人用はそのままです。電話の交換手ネタなど、若い人には意味がわからないような内容もありますね。改定が期待されます。
レベルアップのために秦先生の2冊を追加する
P-Fスタディ アセスメント要領
1章 P-Fスタディの概要
1 テストの特徴
2 反応分類
3 ローゼンツァイクの理論
2章 実施法
1 実施の方法
2 実施上の諸問題
3章 スコアリング
1 スコアリングの基礎
2 スコアリングの誤り
3 スコアリングの要点
4 スコアリング因子の細分化
4章 整理法
1 整理票の作成
2 記入例
5章 解釈法
1 解釈の基礎
2 分析の方法
3 総合的解釈
4 解釈の要点
6章 事例
P-Fスタディ アセスメント要領は入門書というよりは実施者の最初の手引きとなるような書籍となっています。検査にあたって疑問となるような点や間違いやすい点などを細やかに拾っているのが特徴といえるでしょう。
1章では投影法としてのP-Fスタディの特徴やローゼンツァイクによる理論の概要が提示されています。検査を実施するうえで拠っている理論を知ることは必須といえるでしょう。 2章ではテストの実施法が説明され、実施のための要件や基本的な実施方法について説明があり、3章ではスコアリングをする際の条件に付いて書かれています(スコアリングには使用手引きが必要)。この辺りは細かいコツなどが書かれていて便利です。4章では整理の仕方が説明されています。P-Fスタディの整理は煩雑なところもあって苦手感を抱いてしまう。そのため、私は解釈支援のアプリを利用させていただいています。でも、基本を知っておくのは必要なことでしょう。
5章では解釈の方法について説明されています。解釈の基礎的な部分から、相当的な解釈まで丁寧に説明されています。従来の形式分析に加えて、生の反応語を分析する内容分析にも触れられているのが特徴です。6章は発達障害、その再検査、不登校、健常者の4ケース分の事例について書かれており、所見を作成する際のヒントがもらえます。
このようにP-Fスタディ アセスメント要領は検査の基本から、解釈法、事例まで網羅した手引書と言えます。P-Fスタディを実施しなくてはいけない、でも細かいことがわからないとなったときに手に取ると助かる一冊です。
P-Fスタディの理論と実際
第1章 P‐Fスタディの概要 (P‐Fスタディの歴史的経過 日本におけるP‐Fスタディ 信頼性 妥当性 P‐Fスタディの評価)
第2章 P‐Fスタディの反応分類 (反応分類の理論 スコアリング要素の因子分析とクラスター分析 反応分類の再検討)
第3章 実施法とスコアリング (実施法 スコアリング)
第4章 解釈指標 (GCR 反応転移)
第5章 刺激場面の特徴と解釈 (場面の分類 刺激場面と反応の関係 場面分析法)
第6章 質疑法 (P‐Fスタディと質疑法 質疑法の解釈 質疑法に関連する研究)
第7章 事例研究 (解釈の手順 事例)
P‐Fスタディの理論と実際は同著者のひとつ前の著書となります。基本的な内容はP-Fスタディ アセスメント要領と似ていますね。もう少し詳しく、基礎的な内容が書かれている一冊です。
序論ではP-Fスタディの日本における導入から説明がなされており、2章ではローゼンツァイクの理論に基づき、どのような因子分析がなされたかなどが書かれています。
3章4章では実施方法やスコアリング、解釈方法が説明されており、基本的な実施方法、スコアの信頼性について、GCRについてなど基礎的な資料も示されています。5章の場面分析法も同じく因子分析の内容などが提示されていますね。この辺り、きっちりと理論的根拠を抑えたい人には大事なポイントでしょう。7章では非行2例、不登校2例の事例が提示されています。
内容的にはかぶる部分があるため、まずはP-Fスタディ アセスメント要領を購入することをお勧めします。それでもう少し詳しく知りたいときに理論と実際、さらにはローゼンツァイクの攻撃行動とP-Fスタディを読み込んでいくといいでしょう。
攻撃行動とP-Fスタディ
攻撃行動とP-Fスタディは図書館で読んだだけで手元に所持していないので、詳しい書評は差し控えます。DATABASEから引用だけしておきます。
本書の1部はP‐Fスタディの現在の状況について概観する。攻撃の定義とP‐Fスタディの概要に続いて、P‐Fスタディの信頼性と妥当性についての批判的な論議を行なう。P‐Fスタディのさまざまな適用(実用的妥当性)についても触れる。2部はP‐FスタディとP‐Fスタディに関する研究の簡単な歴史を紹介する。さらに、引用索引付のP‐Fスタディ研究の分野別分類を掲載する。3部は文献の索引で、すべての引用文献の著者と題目を記載した。
攻撃行動とP-Fスタディ
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