本記事はlulu-web過去ログをリライトしたものです。元の原稿は1999年に作成したので内容的に古い記述も見られます。時代背景も大切な資料ですので、ほぼそのまま掲載しています。
日常生活のストレスを解消するためのセルフヘルプ
日常生活において、こんな状況になることはありませんか?
・嫌なことばかり思い出してしまって、気分が落ち込んでしまう。
・なんだか無性にイライラする。
・気分が落ち込んでしまって、さみしくなる。。
・いろいろ考えてしまって、なかなか寝つけない。
・気持ちを切り替えようと思っても、うまくできない。
自分でわかっていても、努力しても、こうした状況から抜け出すのは大変なことです。
根本的には、カウンセリング等を受けることによって解決するのが好ましいのでしょうが、現実問題として気軽通えない事情の方もいるかと思います。
また、すでにカウンセリングに通われている人も、次のカウンセリングを待つのがつらくなってしまうことがあると思います。
ここでは、そんな時に役立つかもしれない、セルフヘルプの方法を紹介します。
こころの整理法:イメージを使った整理法
「こころの整理法」というのは、産業医科大の増井武士先生が開発した「こころのリラックス」の方法です。
「何だかいつも気になっていることがある」「夜になるといろいろ考えてしまって眠れない」「何か行動に移したいのだけど、もやもやして一歩踏み出せない」・・・そんなことってありませんか?
そんなとき、ちょっと時間を取って、「こころ」と向き合って見るのもいいかもしれません。というよりも、これは向き合うという感じではなくて、仕分けるって感じなんですけどね(^-^;;。
いくつかステップがあるのですが、ここではluluなりのアレンジを加えたものを紹介します。これだけでも、気持ちがすーっとおさまるんですよ。luluも「こころ」がごちゃごちゃしたときにやっています。
++ step 1 ++
リラックスができるような場所と、誰にもじゃまされない時間を確保しましょう。時間は5分くらいでもかまいません。できたら、落ちついて座れる場所がいいでしょうね。
++ step 2 ++
座ったら、軽く目を閉じましょう。
(慣れてきたら、閉じなくてもできると思います)
++ step 3 ++
軽く身体を動かして、自分が楽になれる姿勢を探して見ましょう。深呼吸して見たり、肩を動かして見たり、つま先をちょっと動かしたりして見るといいかもしれません。
++ step 4 ++
「最近、どんなことが気になっているかな??」と、いまの自分が抱えている問題や気がかりを探して行きます。見つかるたびに、「あ、~があった」と指を折って数えていきます。
その時浮かんだ「気がかり」のイメージを、自分のまわりのどこか納まりがいいところに置いてみます。
例えば「明日の仕事のことは、見えない背中の方において見る」など、いろいろ工夫をして見てください。どんな小さいことでも、ちゃんとひとつの問題として数えましょう。今日のご飯の献立のことでもいいのです。
注意しなければいけないのは、問題について考えたり、分析したりしないことです。ただ、「こんなことがある。あんなこともある」とゆっくりと点検して行くことがポイントです。
++ step 5 ++
ときどき、深呼吸をしてみたり、身体を動かしたりすると、新しい気がかりが浮かんで来たりします。
++ step 6 ++
「もうないかな? 他にないかな?」としつこく探して見ます。
++ step 7 ++
もうなくなったら、いろいろな問題を抱えている自分をその場所に置いたつもりで、少し場所を移動します。そして、いろいろな問題を抱えている自分を、「ああ、こんな問題を抱えていたんだね」と少しの間眺めて見ましょう。
何か感想が起こってきたら、ちょっと心に留めておきましょう。
++ step 8 ++
時間があるようでしたら、問題を抱えている自分を白紙に戻して、もう一度 step1 からやってみるといいでしょう。でも、一回だけで結構効果ありますよ。
関連書籍
一般向けには、増井武士 『迷う心の「整理学」―心をそっと置いといて』 講談社現代新書がお薦めです。専門家向けには、増井武士 『治療関係における「間」の活用―患者の体験に視座を据えた治療論』 星和書店をお薦めします。
コラージュ:貼り絵でストレス解消
コラージュ(collage)というのは、フランス語で「のりで貼ること」という意味を持っています。日本語にすると「貼り絵」という感じになるのかな?
このコラージュが日本のカウンセリングの場で使われるようになったのは、結構最近のことになります。luluもたまにやりますが、けっこうストレス解消になるんです。試してみてはいかが?
++ 用意するもの ++
・いらない雑誌、広告、カタログ、写真など
・ハサミ、のり、カッターナイフ
・八つ切、もしくは四つ切の画用紙
(スケッチブックやB4・A3の紙でもかまいません)
++ やり方 ++
①雑誌などの中から、気に入ったり、面白いな~と思う絵や写真を
自由に切り取る
②それを台紙に配置して、張り付ける
③完成したら、作品を眺め、どんな感じがするか味わってみる
④できるのであれば「題名」をつけてみる
⑤裏側に、作った日付、題名、感想などを書きとめる
⑥作品は、かざるなり、捨てるなり、気の向くままに・・・。
++ ポイント ++
・あまり美術的なことにはこだわりすぎない方がいいみたいです
・できあがった「作品」を分析したりするのはやめましょう
・少し時間が経った後に見直してみると、発見があるかも?
・luluの作品はこんな感じです(たぶん院生のときのです)[1][2]
++参考文献++
山上 榮子(2014)「コラージュの見方・読み方―心理臨床の基礎的理解のために」ナカニシヤ出版
杉浦京子(1994)『コラージュ療法―基礎的研究と実際』川島書店
森谷寛之 編(1999)『現代のエスプリ コラージュ(No.386)』至文堂
TFT:ツボをとんとん叩きます
TFT(Thought Field Therapy)は新しいタイプのセラピーで、つぼをタッピングすることで心理的な問題を解決することができます。私はレベル1トレーニングのみ受けています。
特筆すべきなのは、やり方が比較的簡単であるのにも関わらず、従来のセラピーではなかなか効果が出なかった領域の治療を得意としているところです。EMDRと並んで、最近話題になりつつあるセラピーと言えます。
TFTはアルゴリズムレベルで70~80%、診断レベルで90%、VTレベルで98%の治療率があると言われています。対象としては、単純な「PTSD」の治療にもっとも優れており、「恐怖症」「不安(パニック障害)」「依存(タバコなど)」にも高い効果をもっています。
TFTでは、アルゴリズムとして、この症状にはこういうパターンでの治療というのが決まっており(アルゴリズムレベルの治療)、それを自分で試すことができます。
セルフヘルプでは、代表的なアルゴリズムの1つ「複雑なPTSD」用のアルゴリズムを紹介します。このアルゴリズムには「恐怖症」「不安」の治療アルゴリズムも一部含まれていますので、「PTSD」以外の問題を抱えた人にも効果があると思います。
副作用はほとんどありませんので、ぜひ一度試してみてください。
ただし、注意していただきたいのは、解決しようとしている問題が大きすぎる場合フラッシュバックを起こしてしまったり、パニック状態になってしまうことがありますので、そうした場合には専門家の指導のもと行うことをお勧めします。
その他の場合でも何か問題が起きたときに対処できるように、信頼できる人に近くにいてもらったり、やり方を読んで誘導してもらったりする方が好ましいでしょう。
++スポットについて++
まずはタッピング(叩く)するスポット(つぼ)について説明します。
眉頭スポット
≫ 眉間の近く、眉が始まる部分。
目の下スポット
≫ 瞳から真下に移動して骨が始まる部分。
わきの下スポット
≫ わきから10cmほど下がったところ。乳首と同じ高さ。
鎖骨下スポット
≫ 左右の鎖骨が合わさったくぼみから下に2cm、左右どちらか
に2cmくらい移動したところ。(鎖骨のすぐ下のへこんだ部分)
PRスポット
≫ 空手チョップで相手に当てる部分。(小指の付け根と手首の
中間部分)
ガミュートスポット
≫ 手の甲にある小指と薬指から続く溝を手首の方に1~2cm
移動した部分。
++ 「複雑なトラウマ」用アルゴリズム ++
(1) 解決したい問題について考える。
(2) 問題の苦痛のについて、0(全く苦痛を感じない)~10点
(非常に苦痛である)で点数をつけ紙に書きとめる。
(3) 眉がしらスポットを5~6回叩く。
(4) 目の下スポットを5~6回叩く。
(5) 腋の下スポットを5~6回叩く。
(6) 鎖骨下スポットを5~6回叩く。
(7) 問題に関する苦痛の度合いについて、また点数をつける。
→2点以上低下した場合は(8)へ。
→低下しなかった場合は「心理的逆転の修正」を行い(1)に戻る。
(8) ナインガミュートを行う。
(9) 眉がしらスポットを5~6回叩く。
(10) 目の下スポットを5~6回叩く。
(11) 腋の下スポットを5~6回叩く。
(12) 鎖骨下スポットを5~6回叩く。
(13) 問題に関する苦痛の度合いについて、また点数をつける。
→点数が1点以下の場合は(14)へ。
→低下しなかった場合は「心理的逆転の修正」を行い(1)に戻る。
(14) ガミュートスポットを叩きながら、顔は正面を向いたまま、
目線だけを床から天井に移動する(7~8秒かけてゆっくりと)
++ ナインガミュート ++
≫ ガミュートスポットを叩きながら(1秒に3~5回)
(1) 目を開ける
(2) 目を閉じる
(3) 目を開けて、左下を見る
(4) 右下を見る
(5) 眼球をぐるりと一方に回す
(6) 反対方向に眼球を回す。
(7) 何の曲でもいいからハミング(数小節)
(8) 「1、2、3、4、5」と声を出して数える
(9) ふたたびハミングする
++ 心理的逆転の修正 ++
≫ PRスポットを15回タップする。
++ 参考サイト・文献 ++
TFTを日本に普及させ、VTの資格を取った最初の日本人である高崎吉徳さんは、残念ながら逝去されました。「車椅子のセラピスト」こと高崎さんはユーモアと行動力のあるすばらしい人でした。TFTに関しても論文を読ませていただき、非常に参考になりました。ご冥福を心よりお祈りいたします。
■ 高崎さんのHPhttp://www.vaw.ne.jp/business/takasaki/index.htm
高崎吉徳(1999)「恐怖症・PTSD・パニック障害など不安障害の
短期療法」『医療におけるブリーフセラピー』,金剛出版
高崎吉徳(1998)「EMDRとTFT -PTSDの新しい治療-」
精神科治療学,13(7),pp833-838,星和書店.
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