WAIS™-IV知能検査の結果の見方、その特徴と解釈について説明します。ウェイスフォー

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知能検査とは?

 

知能とは「目的を持って行動し、合理的に考え、効率的に環境と接する個人の総体的能力」として定義されます。それを数値として見たり、客観的に評価する検査が知能検査です。

つまり、知能検査は「個人の特性について、得意や苦手がどうなっているか、知能や発達の水準がどの程度かをより客観的に見る」ための道具と言えます。

 

知能検査では発達障害を診断できない

 

医療機関においては、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如多動性障害(ADHD)などの発達障害の診断の助けとするために使われることがあります。これは全体的な知的水準を確かめたり、得意や苦手を調べるために行われます。

注意しなくてはならないのは、知能検査で発達障害の診断はできないということです。病院に受診の際に「(自分や子どもが)発達障害か知りたいから検査をしたい」とおっしゃられ、その目的で知能検査が実施されることがあるようですが、これは間違っています。発達障害かどうかは、生育歴や現在の状況を伺い、診断の基準に当てはまるかどうかで決まります。

私も検査の際はくどいくらい説明をしますが、こうした誤解が収まる気配が見られないことを残念に思います。困っている当事者の方に責任はまったくなく、その周辺にいる専門職や施設などのスタッフの勉強不足が主な原因と考えています。

 

知能検査の種類

 

医療機関、教育機関でもっとも実施されているのがウェクスラー式の知能検査です。成人向けと児童向けで違う検査が用意されています。

療育の分野などでは、新版K式発達検査が用いられます。

中等度以上の知的障害の方には田中ビネー知能検査Vが用いられることが多いでしょう。

発達障害のアセスメントの目的で日本版 K-ABCⅡが実施されることもあります。

 

・ウェクスラー式知能検査

 成人用:WAIS-IV(Wechsler Adult Intelligence Scale)

 児童用:WISC-IV(Wechsler Intelligence Scale for Children)

・田中ビネー知能検査V

・日本版 K-ABCⅡ

・新版K式発達検査

 

WAIS™-IVの構成

WAIS-IVの適応範囲、実施時間

 

WAIS-IV(ウェイス・フォー)は、日本文化科学社から販売されているウェクスラー式の知能検査成人版です。原板出版社はPeason社です。日本では2018年に販売されています。

WAIS-IVの対象年齢は16歳から90歳11ヶ月となっています。児童版のWISC-IVが5歳から16歳11カ月となっているので16歳から16歳11ヶ月の対象者はどちらの検査でも実施が可能です。私の勤務先は成人の精神科ですので、今後の比較などの要素を加味して、WAIS-IVを実施することが多いですね。課題の困難さなどからWISC-IVのが感度がいいという話もありますし、児童精神科ではWISC-IVが優先されるかもしれません。

実施の時間は基本検査のみで60分前後、補助検査を含めると90分前後に収まることが多いです。可能であれば全部の検査を実施したいところですが、時間のコントロールの都合から1時間 or 2時間かで区切ってしまうことが実情です。

 

群指数の内容

WAIS-IVは4つの群とそれぞれの下位検査から構成されています。下位検査は、IQ算出に必要となる基本検査とそれ以外の補助検査に分かれています。

 

言語理解は、基本検査が類似単語知識、補助が理解

知覚推理は、基本検査が積木模様行列推理パズル、補助がバランス絵の完成

ワーキングメモリーは、基本検査が数唱算数、補助が語音整列

処理速度は、基本検査が記号探し符号、補助が絵の抹消

 

 

基本検査が何らかの事情で実施できなかったり、実施に不具合があったりした場合、補助検査が群指数やIQの算出に使われます。

 

下位検査の内容

言語理解
類似:口頭で提示された言葉がどのような点で似ているかを答える
単語:絵の名称を答える。提示された単語の意味を答える。
知識:一般的な知識に対する質問に答える。
理解:一般的なルールや社会的状況への質問に答える。


知覚推理
積木模様:提示されたモデルと同じ模様を作る。
行列推理:不完全な行列をのに完成させるのに適切な選択肢を選ぶ。
パズル:組み合わせると見本と同じものを選ぶ。
バランス:天秤が釣り合うための重りを選択肢から選ぶ
絵の完成:絵の中で欠けている重要な部分を探す


ワーキングメモリー
数唱:読み上げられた数字を決められた順に答える
算数:口頭で提示された算数の文章題に答える
語音整列:読み上げられた数字とかなを並べ替えて答える


処理速度
記号探し:刺激記号がグループの中にあるかを判断する
符号:数字と対になっている記号を書き写す
絵の抹消:特定の図形を探し線を引く

 

プロセス得点

基本検査や補助検査の情報から、以下の7つのプロセス得点を算出し、さらに詳しい分析をすることができます。

積木模様:時間割増なし
数唱:順唱
数唱:逆唱
数唱:順唱の最長スパン
数唱:逆唱の最長スパン
数唱:趨勢列の最長スパン
語音整列:最長スパン

WAIS™-IV 全検査IQ/群指数/下位検査の一般的な解釈

基本的な分析の方法

全体的な情報から特定の情報の順に整理をしていく。

1.全検査IQを報告、記述する
2.4つの指標得点を報告、記述する
3.指標レベルでのディスクレパンシー比較をする
4.強みと弱みを評価する
5:下位検査レベルでディスクレパンシー比較をする
6:下位検査内の得点パターンを評価する
7:プロセス分析を実施する
8:(必要に応じてGAIの算出など)

より下位の項目でまれな差が見られた場合には、算出された数値をそのまま解釈するのは適切ではない場合があるので注意が必要。

 

IQの数値の解釈、分布について

WAIS-IVにおけるIQの数値は絶対的なものではなく、正規分布を仮定し、平均が100、標準偏差が15となるように作られています。簡単に言えば、IQ=100前後になる人が最も多く、そこから外れる人が割合として減っていくイメージです。

http://www.as-japan.jp/j/file/rinji/assessment_guideline2013.pdfより抜粋

 

比較する同世代の人の約半分がIQ90~109の範疇に入り、95%くらいの人がIQ70〜129の範疇に入ると考えれば理解しやすいでしょうか。それぞれの値は非常に高い~非常に低いまで以下のように分類されます。

IQ得点の正規分布では、約2.2%の人がIQ69以下となります(平均点より2SD低い値を取る)。その範疇のIQは更に分類がなされます。

一般的にはIQ=50~69軽度の知的障害IQ=35~49中等度の知的障害IQ=20~34重度の知的障害IQ=20未満最重度の知的障害と判断されます。障害者手帳や障害年金などの判定は、これらの数値を参考にすることが多いでしょう。

群指数の解釈

群指数も数値はIQと同じように算出され、評価の仕方も同じです。

4つの分野は概ね以下のように解釈されます。

 

言語理解 :言葉を中心とした理解力、知識など。

知覚推理: 視覚を中心とした状況の把握、理解の力など。

ワーキングメモリー:聴覚を中心とした記憶や注意力、集中力など。

処理速度:作業の正確さやスピード、処理能力など。

下位検査の解釈

言語理解
類似:口頭で提示された言葉がどのような点で似ているかを答える
単語:絵の名称を答える。提示された単語の意味を答える。
知識:一般的な知識に対する質問に答える。
理解:一般的なルールや社会的状況への質問に答える。


知覚推理
積木模様:提示されたモデルと同じ模様を作る。
行列推理:不完全な行列をのに完成させるのに適切な選択肢を選ぶ。
パズル:組み合わせると見本と同じものを選ぶ。
バランス:天秤が釣り合うための重りを選択肢から選ぶ
絵の完成:絵の中で欠けている重要な部分を探す

ワーキングメモリー
数唱:読み上げられた数字を決められた順に答える
算数:口頭で提示された算数の文章題に答える
語音整列:読み上げられた数字とかなを並べ替えて答える


処理速度
記号探し:刺激記号がグループの中にあるかを判断する
符号:数字と対になっている記号を書き写す
絵の抹消:特定の図形を探し線を引く

歴史的な変遷(WISC-Ⅲ→Ⅳ、WAIS -Ⅲ→Ⅳ)

 

少し専門的なこともまとめておきます。

ウェクスラーの知能検査は第3世代(Ⅲ)から第4世代(Ⅳ)に移行され、海外では第5世代に移りつつあります。

第4世代の特徴としては、第3世代にあった言語性IQ/動作性IQが廃止され、IQに関する合成得点は全検査IQのみとなっている点があげられます。また追加の指標として、GAI(General Ability INdex)とCPI(Cognitive Proficiency Index)が算出できるようになり、解釈に深みが増しました。

4つの指標得点もWAIS -Ⅲの言語理解(VC)/知覚統合(PO)/作動記憶(WM)/処理速度(PS)から、WAIS -Ⅳでは言語理解(VCI)、知覚推理(PRI)ワーキングメモリー(WMI)、処理速度(PSI)と内容が変わりました(WISC-Ⅲでは、注意記憶FD)。

内容の違いとしては、下位検査は新たに3つの下位検査「パズル」「バランス」「絵の抹消」が追加され、「数唱」に数整列の課題が加わっています。WAIS-IIIにあった「絵画配列」「組合せ」は廃止され、「符号」の補助問題が削除されています。

こうした構成の変化から、WAIS-IVにおいてワーキングメモリー(WMI)と知覚推理(PRI)は、学習や行動におけるつまづきを敏感に予測する指標として利用することができます。ワーキングメモリーの弱さは聞く・話す・読む・書く・計算する・推論することの困難さと関連が予測できますし、不注意・多動性といった行動面での困難さも読み取ることができます。知覚推理の弱さは計算する・推論することの弱さとの関連が予測できます。

WAIS™-IVの特徴

個人間差と個人内差の両面から認知特性を見るツール

WAIS-IVの特徴としては、個人の認知プロフィールを同世代の集団との相対比較による個人間差と同一個人の評価点の差に基づく個人内差の両面から個人の認知特性を計量的に評価できることがあげられます。

またグラフによる合成得点のプロフィールによって、受験者の認知面での強さと弱さを視覚的に捉えることも可能です。ただし、単純な高低差だけのプロフィール分析では、表面的な特徴だけをさらうだけになってしまう危険性もはらんでいます。事例発表ですらそうした解釈がなされていることがあり、注意しなければなりません。

こうした検査では受験者の日常生活における特徴を踏まえて、所見を書いていく必要があるのは言うまでもないでしょう。数字だけが一人歩きをし、検査のみで行き過ぎた解釈がなされることは受験者の不利益になりえます。

ディスクレパンシーの分析においても、第3世代の有意差判定から標準出現率による理解に重心が移っています。有意差のみでは数値が先走る結果になりやすいデメリットがありましたが、標準出現率で考えれば大な差を示す人がいたか、いなかったかという視点で考えることができます。大きな有意差があってもよくある差ということがありえるのです。ひとつの基準として、15%以下の標準出現率はめったに見られない特徴だと考えていいとのことです。

  

WAIS-IVの最新情報はテクニカルレポートから!

実施される方は、定期的に日本文化科学社のWAIS-IV知能検査 テクニカルレポートに目を通すようにしましょう。

WAIS-IV知能検査 テクニカルレポート | テクニカルレポート | 心理検査 | 日本文化科学社

 

WAIS-IVの解説書はまだ翻訳されていない

残念ながら未だWAIS-IVを解説した日本語の書籍はありません。早く発売されないかとじっと待っている状態です。勉強熱心なお人には、WISC-IVでは定番となっているエッセンシャルシリーズの原著がおすすめです。WAIS-IVの英語版は以下のリンクからどうぞ。

Essentials of WAIS-IV Assessment (Essentials of Psychological Assessment)

 

Vineland-IIとの組み合わせがスタンダードになる?

令和2年度の診療報酬改定の絡みから考えるとWAIS-IVやWASC-IVに加えて、Vineland-IIを組み合わせることで、知能をIQという数字だけではなく、重症度という観点から見ることに繋がっていきます。

下記のまとめも参考にしてください。

*本稿はWAIS-IVを有益に活用するための一般的な情報提供に過ぎません、個別の解釈については検査担当者や主治医の判断が含まれます。また専門的な利用に関しましては、付属のマニュアル等を熟知の上での実施をおすすめします。 

本稿を作成のための参考資料

http://www.rehab.go.jp/ddis/?action=common_download_main&upload_id=3180
https://s-office-k.com/psychologicaltest/wais
https://www.nichibun.co.jp/kensa/detail/wais4.html
「WAIS-IV知能検査 実施・採点マニュアル」日本文化科学社
「WAIS-IV知能検査 理論・解釈マニュアル 」日本文化科学社

 

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