AHDHに関する質問紙で診療報酬を取れるのはWURS
精神科では一定の割合で「大人の発達障害」を疑って来院される方がいます。その際、ADHDの症状を網羅する心理検査には選択がほとんどありません。診療報酬が取れる質問紙はWURSのみです。WURSは幼少期の様子を自己評価するものであり、やや不注意傾向の項目に欠けるところがあります。
CAARSはADHD症状を測定する標準ツール
そのため実際の診療では、ADHDに関する現在の症状を大まかに知るための検査が必要となります。そのオススメがCAARSです。CAARSは成人のADHD症状を測定できる質問紙尺度として、欧米で最も多く利用されているツールです。
日本ではCAARSを標準化したCAARS™ 日本語版が販売されています。ただし、診療報酬は取れません。自己観察用の用紙が5名分で4500円……ええと、診療報酬取れないのに1ケース-900円。混合診療できないので実費で請求もできない。はぁ……とため息も出ますが選択肢があまりありません。令和2年度の改定で報酬取れるかと思っていたのですが期待はずれでした。
CAARS™ 日本語版のよいところ
CAARS™ 日本語版のよいところは、DSM-IVによるADHD診断基準と整合性があるという点です。尺度は以下の通りです。
A. 注意不足/記憶の問題
B. 多動性/落ち着きのなさ
C. 衝動性/情緒不安定
D. 自己概念の問題
E. DSM-IV不注意型症状
F. DSM-IV多動性-衝動性型症状
G. DSM-IV総合ADHD症状
H. ADHD指標
ADHD者を判別するためのカットオフ値は決められていません。一般にT得点が65点以上というカットオフ値が用いられることが多いようです。顕著な症状としては70点以上が目安でしょうか。ご自身がADHDを疑って来られる場合は80点超えが頻発ということもしばしば見られます。その場合は過剰に見積もられていないかの判断が必要です。項目内での矛盾を見る基準も設けられています。
日本語版作成のデータとしては次の論文が参考になります。
「成人期のADHD症状評価尺度CAARS-screening version(CAARS-SV)日本語版の信頼性および妥当性の検討」https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.11477/mf.1405101761
CAARS™ 日本語版の残念なところ
実用する上でCAARS™ 日本語版の残念なところは、整理などのしにくさです。
例えば、最初のページの上部に患者さんの情報を書き入れるのですが、名前を書く欄がありません。プライバシーへの配慮でしょうか? 私としては自分が記入しましたという意味で検査をするときには名前を入れてもらうんですけれど、CAARS™ 日本語版ではそれができません。仕方ないので「IDのところに書いてね」と伝えます。
実は一枚めくれば、名前欄はあるのです。私がわざわざ記入しなくてはいけません。複写式になっているのに、何度も記入する項目が多めです。生年月日は私が記入しようとするとフリーズします。なぜなら電子カルテは年号で生年月日が表記されているのです。「西暦」という文字さえなければ、年号でも西暦でもどちらでも記入できたのに……。900円もするのにヒューマンインタフェースの欠片もありません。心理学者が作成した心理検査なのにね。改定されることを期待します。
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