感情表出(EE)について
統合失調症の患者さんの再発と家族の態度には関連があると言われています。そのキーワードが感情表出(EE:Expressed Emotion)です。
統合失調症の患者さんは、家族を始めとするまわりの人々の接し方にとても敏感です。まわりの感情の表出の仕方を感情表出=Expressed Emotionの頭文字をとってEEと呼びます。患者さんに向かって強い感情表出が向けられることを高EEと呼び、そうした環境下にある患者さんは再発のリスクが上がると言われています。
低EE家族と高EE家族での再発率の違い
イギリスのVaughnら(1976)は、病院を退院した統合失調症の患者さんの再発率を調べました。
9カ月後の再発率は、低EE家族で13%、高EE家族では51%だったそうです。Vaughn(1976) Schizophrenia: An Integrated Approach to Research and Treatment
感情表出EEの3つのタイプ
高EEと呼ばれる感情表出には3つのタイプがあります。
批判的な感情表出
「家でごろごろしている」「暇なのに何もしない」と患者さんに対して批判的な文句をいうようなこと
敵意のある感情表出
「お前のせいで人生が台無しになった」「どこかに行ってほしい」「いっそ死んでほしい」と敵意のある感情をぶつけること
情緒的に巻き込まれた感情表出
「何もできないから守ってあげないとだめだ」「この子の気持ちは私しかわからない」と過保護・過干渉になってしまうこと
継続的な関わりのもとで捉えるべき
つまり、このような高EEレベル関わりが行われている家族では患者さんの再発率が高くなり、その逆であれば再発率が低いということになります。
統合失調症の患者の家族ということで、高EEの対応を一括にしてしまいそうになりますが、それは正しいとは言えません。統合失調症という疾患は、その経過が長くなることがしばしばです。その中で家族や本人との間に、さまざまな感情、思いが出てくること自体が間違っているわけではないのです。
そのため、高EEと言われる感情を抱く家族は悪であるとしてしまうと悲しいことになります。経過が長くなり、ときに治療がうまく行かない場合には、このような気持ちを抱いてしまうことはあるでしょう。継続的に、直接の敵意表出が続いたり、一方的な保護が続くことは避けていただきたいと思いますが、家族として暮らしていく中でこうした思いが出ること自体を否定しないでください。
ひとつの知識として、このようなEEの理解を深めてもらうことがまずは大切です。それが心理教育の考え方とも繋がります。そして、統合失調症の患者さんの家族も支援を受けるべき対象となり、サポートされながら、一緒に病気と立ち向かっていくような姿勢が大切です。
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