大人の知的障害について、その区分(軽度から最重度)や特徴、原因や遺伝について説明します。

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知的障害の概念は、精神遅滞(MR)とほぼ同義と考えていいと思います。医療分野では精神遅滞(MR)という言葉がよく使われていましたが、DSM-5では、「知的能力障害(知的発達症)」という表記が使われるようになっています。

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DSM-Vによる知的能力障害(知的発達症)の定義

知的能力障害(知的発達症)は、発達期に発症し、概念的、社会的,および実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害である。以下の3つの基準を満たさなければならない。

A 臨床的評価および個別化、標準化された知能検査によって確かめられる、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習、および経験からの学習など、知的機能の欠陥。

B 個人の自立や社会的責任において発達的および社会文化的な水準を満たすことができなくなるという適応機能の欠陥。継続的な支援がなければ、適応上の欠陥は、家庭、学校、職場、および地域社会といった多岐にわたる環境において、コミュニケーション、社会参加、および自立した生活といった複数の日常生活活動における機能を限定する。

C 知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。

「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引」医学書院より要約

知的障害の診断方法、重症度の判定

厚生労働省による定義

知的障害・精神遅滞・知的能力障害(知的発達症)、どれも広義には同じものを指し示しており、「知的機能の欠陥」「適応機能の欠陥」「18才までに発症している」という3つのポイントから診断されることになります。

厚生労働省は「平成 17 年度知的障害児(者)基礎調査」において「知的障害」を「知的機能の障害が発達期(おおむね 18 歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と定義しています。

具体的には、厚生労働省のページにて以下のように説明されています。

 次の (a) 及び (b) のいずれにも該当するものを知的障害とする。

(a)  「知的機能の障害」について

 標準化された知能検査(ウェクスラーによるもの、ビネーによるものなど)によって測定された結果、知能指数がおおむね70までのもの。

(b)  「日常生活能力」について

 日常生活能力(自立機能、運動機能、意思交換、探索操作、移動、生活文化、職業等)の到達水準が総合的に同年齢の日常生活能力水準(別記1)の a, b, c, d のいずれかに該当するもの。

標準化された知能検査による判断

知的能力に関しては、見極めに標準化された知能検査が用いられます。ウェクスラー検査のWAIS-IVWISC-IV、ビネー式検査の田中ビネー知能検査Vなどが中心となるでしょう。これらの数値は知的の平均からの偏りで示されるので、人口の2.5%はIQ=70未満の知的障害に相当することになり、軽度の知的障害がその85%に当たります。

それぞれの検査の内容に関しては、以下のリンクを参照ください。

 

IQの値による重症度の判断

現在では、先述したように総合的な判断が求められるため、知能検査に基づくIQの値だけでは、最終的な知的障害の判断はできないことになっています。

しかし、これまでの判定としては、IQ=50~69を軽度の知的障害、IQ=35~49を中等度の知的障害、IQ=20~34を重度の知的障害、IQ=20未満を最重度の知的障害と判断しており、実情としてはこちらの判定が用いられていると考えられます。

程度別の重症度判定、知的障害の判定

適応能力に関しては、個人の自立や社会的責任において発達的および社会文化的な水準を満たすことができるかで判断されます。下に引用した図表のa:最重度,b:重度,c:中度,d:軽度が生活能力の重症度判定です。IQの数値による判定に加えて、適応能力に援助が必要になる程度によって、知的障害の最終的な判断が変わってきます。日常生活能力の判定が最重度であれば知的障害の判定は1ランク下に、軽度であれば1ランク上に判定されることになります。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html

18歳までの発症について

「18才までに発症している」という点については、過去に特別支援学級に属していたか? 通知表の成績はどうだったか?などの聞き取りがなされることがあります。短大や大学を卒業しているのに、知能検査を実施するとIQが低値ということがあったりします。

精神障害で言えば統合失調症や気分変調症、認知症などの経過の中で一時的に、また継続的に能力が低下することがあったりします。こうした場合との鑑別が必要となります。例えば認知症が重症化し、判断力が低下した場合などは、知的障害とは診断されないでしょう。

 

知的障害の原因

生理的要因、病理的要因、心理・社会的要因の3つに大別されます。

生理的要因:身体に特別の異常がないものの知能検査の結果IQ70未満だった場合です。

病理的要因:脳に何らかの病気あるいは損傷があって、知能の発達が妨げられている場合です。先天性代謝異常、染色体異常、脳形成異常症や出産時の外傷、乳幼児期の脳外傷、感染症などが含まれます。

心理・社会的要因:虐待など発達に著しく不適切な環境に置かれている場合です。

 

知的障害への支援

就労移行支援、就労継続支援

障害者総合支援法に基づく就労支援サービスとして、就労移行支援があります。

就労移行支援では、一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートから、就活~就職後の職場への定着サポートまでをおこないます。

就労移行支援LITALICOワークスなどが、全国的に有名なサービスを展開しています。それぞれの障害のある人の特性を理解し、それぞれの人にあったペースで就職までの道のりをサポートしてくれます。

就労継続支援は「一般企業への就職が困難だったり、不安を抱えている人向け」のサービスとなります。

成年後見制度

成年後見制度は判断能力が十分でない人のお金の管理や相続に関する手続きなどの法律行為をサポートする制度です。知的障害がある方にも該当する点が多いと思われます。

 

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