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妄想性人格障害 |
「妄想」というのは、実際にはありえない不合理な内容だけれども、本人はそれを信じてしまっていて、まわりの人が指摘しても訂正することのない考えのことを言います。 例えば、「誰もその人のことを傷つけたり不当に扱ったりしていないのに、本人はいじわるされていると思い込んでいる」というのが極端になると被害妄想の範疇にだと言えるでしょう。 「妄想」は、統合失調症の人によくみられる症状ですが、うつ病、中毒性精神病、症状精神病、老年性痴呆などに伴うこともあります(実際には、前者と後者の妄想はニュアンスが違います)。 「妄想」という名前がついているように、現実の状態を信じることをせずに、ささいなことを盾にして「〜ではないか」と疑う傾向がひとつの性格としてパターン化されてしまったものが「妄想性人格障害」だと言えます。 特徴としては、まわりの人を疑ったり、妬んだりしやすく、ちょっとした状況の変化に敏感なことがあげられます。また、議論好き、訴訟好きな傾向もあるようです。ほんの些細な言動を取り上げて「裏切られた」という反応を起こしたりもします。 自己愛性人格障害のニュアンスを持っていると、相手の弱点や欠点を指摘ばかりするのにもかかわらず、自分のことを言われると激怒するようなことがあったり、自分の(潜在)能力について現実離れした妄想を持っていることも考えられます。 また、人を信頼することができないので、親密な友人はほとんどいないことが多いようです。そのため、距離をとった対人関係を持つことが多いのですが、中には親密な対人関係を築いてまわりをコントロールしようとするタイプの人もいるようです。 |
治療としては、その人独自の思い込みを少しずつ解いていくようなカウンセリングが有効だと思います。 何よりも相手を信頼しないので、治療関係に持っていくまでが大変ですし、治療関係自体を良好なまま維持していくのにもちょっとした工夫が必要です。 何らかの精神症状が出ている場合、妄想の内容が過激で生活にかなりの支障が出ている場合には、薬物を投与しながら治療していくほうが好ましいでしょう。 |
妄想性人格障害そのものを扱った書籍というのはあまりありません。強迫性障害との関連で妄想を考察し、対処法が書かれた「妄想に取り憑かれる人々」は比較的近いものかもしれません。 他には、「屋根裏に誰かいるんですよ 都市伝説の精神病理」や同じ作者の「不幸になりたがる人たち 自虐指向と破滅願望」などが参考になるかもしれません。 また専門的で統合失調症寄りになってしまいますが、「幻聴と妄想の認知臨床心理学」という本もあります。 |
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