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フロイトからユングへ―無意識の世界
鈴木 晶
日本放送出版協会 (1999/10)
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[商品レビュー]
この本は、これまで色々と読んできた、フロイトとユング、そして二人が始めた精神分析学や深層心理学について概観した、一般向けによくまとめていると思います。著者は「図説フロイト」と同じ、鈴木晶教授ですから、内容的に重なっている部分もあります。フロイトやユングを語る場合、その時代や人生を知ることが大切だとされていますが、それはこれらの人々の理論が、時代背景や生い立ちを反映しているからだと著者は書いています。この点は、私も同感です。例えば、ユングは霊性やオカルトに強い関心を持っていましたが、これはユングの母親が霊能者の家系だったことも起因していると考えられます。

フロイトとその弟子、アドラーは共にユダヤ人でしたが、フロイトが裕福な患者を相手にしていたのに対しアドラーは専ら貧しい下層の人たちの相手をしていたことから、アドラーの理論は、より政治的で、劣等感やそこから生じる権力欲を重視したと解釈されています。

フロイト、アドラー、ユングの流れを組む精神分析学は、それまで人間が意識中心に動いていると思われていたのに、実は無意識に支配されている部分が非常に大きいのではないかという、人間観に大きな転換点をもたらしました。人間は進化したおかげで、動物のような本能が壊れてしまったために、自然からずれてしまいました。意識から排除して抑圧した影は、それが大きくなると、逆に力を持ち、様々な形で反動を形成するということになるそうです。そのため、自我と影のバランスが保たれるよう、影にもきちんと向かい合うことが大切だとされています。親子間において、親と全く正反対の性質を子供が持つ、というような形で出てくることもあるようです。

より社会的には、ある集団が影を抑圧していると、それを他集団に投影して戦争に発展しやすくなるということや、影を悪魔やお化けといったものに、文化的にイメージ化する、ということもあるようです。この本は、大変分かりやすく、さらにフロイトやユングに関連する事柄を、ほぼ網羅的に書いていますので、入門書として非常に良いのではないかと思いました。

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ユング心理学入門
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河合 隼雄
培風館 (1967/10)
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[商品レビュー]

本書は、私が心理学系学部に入学時に、初年次ゼミにおいて教科書としてに使われた本です。従って、私にとってはユングという人物の理論を知るきっかけとなったものであり、今でも手元において基礎的な理論や用語の再認識に使っているものです。

著者は河合氏というとても有名な人物であり、彼の説明は、当時ユングについてまったくの無知であった私にとって、とてもわかりやすいものでした。

ユング心理学、ユング自身は「分析心理学」と言っていますが、これを理解しようとする、あるいは興味を持った人にとって導入書としてとても意味のあるものとなると思います。この本で基礎をしっかりと固めた後、「タイプ論」や「元型論」といったユングの著書に当たるのが妥当でしょう。

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