実践障害児教育の記事から発達障害とインターネット、ゲーム依存について考えてみます。

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実践障害児教育 2020年6月号 特集:発達障害と併せ有する愛着・ゲーム・睡眠・不安の問題

 

発達につまずきのある子どもを支援するための特別支援教育情報誌。主な記事テーマは、障害理解と児童生徒の指導、教材・教具、自立活動、コミュニケーション指導、保護者連携、ユニバーサルデザイン、インクルーシブ教育システム、合理的配慮、など。

実践障害児教育 2020年6月号に興味を引く内容があったので紹介します。

特集:愛着・ゲーム・睡眠・不安の問題発達障害の診断名に捉われない視点で、一人ひとりの複雑な背景を考察するスキルが求められている。本特集では、発達障害の子どもたちに現れやすい愛着障害・インターネットゲーム障害・睡眠障害・不安障害をテーマに、その理解と支援について解説する。

インタネット依存、ゲーム障害と発達障害

井上雅彦先生が『保護者と協力する「インターネットゲーム障害」への支援』という内容で寄稿されています。

平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果では、青少年のインターネットの平均利用時間は一日169分であり、小学生の利用が増えていると言われます。約3時間のネット利用は多いでしょうか、少なく思いますか? 土日を含めているので簡単には言えませんが、学校から帰宅して、就寝するまでの時間はどれくらいあるのでしょうか。小学生をモデルにして考えてみます。少し余裕を持って4時に帰宅、10時に就寝としてみましょう。使える時間は6時間しかありません。ご飯を食べ、お風呂に入り、宿題をする。それ以外の余暇の時間の多くをネットが占めている可能性すらありますね。

 

インターネットゲーム障害について

DSM-5による「インターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder)」の定義について見てみましょう。*http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/grp/Internet.pdfより引用

インターネットで多くは複数の人が参加することがゲームを持続的に繰り返し行うことで臨床的に重大な障害あるいは苦痛が引き起こされる。12 か月の間に以下の内 5 項目あるいはそれ以上が当てはまる。

1 インターネットゲームに夢中になっている。(前回のゲームのことを考えたり,次のゲームを待ち望んだりして,インターネットゲームが日常生活の主要な活動となる)[註]この障害はギャンブル障害に含まれるインターネットギャンブルとは区別される


2 インターネットゲームが取り上げられたとき離脱症候群を起こす。(典型的な症状は,いらいら・落ち着きのなさ,不安・心苦しさ,嘆き・悲しみといったもので,薬理学的な離脱による身体症状は認められない)

3 耐性―インターネットゲームに参加する時間が増えていく必要性

4 インターネットゲームへの参加をコントロールしようとする試みが成功しない

5 インターネットゲームの結果として,インターネットゲーム以外の趣味や楽しみへの関心がなくなる

6 心理社会的な問題があると分かっていても,インターネットゲームを継続してやり過ぎてしまう

7 インターネットゲームの使用量について,家族やセラピストその他の人たちにうそをついたことがある

8 否定的な感情(無力感,罪悪感,不安など)から逃げるため,あるいはまぎらわすためにインターネットゲームを利用する


9 インターネットゲームによって,大切な人間関係,職業,教育あるいは経歴を積む機会が危うくなったり,失ったりしたことがある

 

インターネット依存は家庭の影響が大きい

発達障害が直接にインターネット依存と関連しているわけではありません。しかし、個人内の特性が影響を与えることはありえるでしょう。例えば、限定された興味やネット視聴時間を伸ばすことに繋がっていたり、コミュニケーションの苦手さがネット社会への逃避へとつながるということは想像しやすいと思います。

また外的な要因としては、不登校がネット依存に拍車をかけることが考えられます。外出すること、人と接することへの不安や生活リズムの変化などがネットへの親和性を高めることになるでしょう。またストレスや攻撃性などをゲームによって解消するような対処行動として、ゲーム依存を考えることもできるでしょう。

一方でネットに接続する機器、ゲーム機器を提供しているのは保護者です。ネットやゲームをどのように利用するのかは、それぞれの家庭によって決まってきます。子どもが小さいうちは一方的な取り決めで利用時間を決めることができるかもしれませんが、子どもの年齢が増すに従って、また親子の関係が複雑になるにつれて、その制限は簡単に行かなくなります。その意味で家庭の役割は重要だと言えるでしょう。

 

インターネットやゲームは悪ではない

ネットやゲームを熱心にしている子どもやその保護者へのカウンセリングをしているとこうした問題を避けて通ることはできません。多くの場合、そうした世界があることで子どもが救われている部分があるのは間違いありません。また、カウンセリングを実施していくにあたって、ネットやゲームの話題が入り口になることがほとんどのケースで見られます。

まずは子どもが持っているその世界を理解する姿勢が必要でしょう。そして、ネットやゲームでの活動が健全な日常生活を送るための支障となっている場合には、必ず本人を交えて、その利用方法について検討していく必要があります。保護者の一方的な制限は、やもすると暴力行為や無気力などを引き起こす危険性もはらんでいます。

ネットやゲームの世界を認めつつ、それに代わる活動を模索していくことが肝要です。取り上げるだけでは解決にならないでしょう。依存を放置せず、丁寧にその作業をしていくことが必要であり、子どもが発達障害を有している場合、その作業に一層の細やかさが求められるでしょう。家庭内の問題はどうしても視野狭窄になりやすいと言えます。そのため、特性をよく理解した専門家との共同作業が結局のところ近道になります。

 

発達につまずきのある子どもを支援するための特別支援教育情報誌。主な記事テーマは、障害理解と児童生徒の指導、教材・教具、自立活動、コミュニケーション指導、保護者連携、ユニバーサルデザイン、インクルーシブ教育システム、合理的配慮、など。

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